売却したいけれどできない?~借地権の譲渡を地主が承諾してくれないとき~

「突然の転勤や引越しなどで借地権を売る事情ができた」「相続した借地の実家を売りたい」と、借地権を売却したいと考えることもあるものですよね。

このとき、地主さんからの承諾がもらえれば売却することはできますが、OKがもらえなかったらどうしたらいいのでしょうか。

◆借地権の売却には地主の許可がいる

借地権は、一般的な不動産のように自由に第三者に売ることができません。

建物は自分の所有物、それに「借地権」という権利自体も自分のもの…ですが、土地の所有は地主さんに権利があります。あくまでも「借り物」のうえに建っている住宅なので、基本的には地主さんの承諾が必要です。

借地人が「承諾料」を支払うことで地主さんからの許可を得るのが一般的な流れです。ただ、口頭でのやり取りで「承諾してもらった」と売却活動を進めようとしてトラブルが起こる可能性もあります。承諾交渉の際には、書面を通じてやり取りするようにすべきでしょう。

◆承諾がないと売却できないの?

「地主さんからの承諾がもらえなくて困っている」と、借地権の譲渡でトラブルとなるケースも少なくありません。

実は、地主さんの承諾の代わりになる対処法があるので見ていきましょう。

◎裁判所に申立てる「賃借権譲渡許可」

地主さんがどうしても承諾してくれないなら、「賃借権譲渡許可」を裁判所に申立てできる制度があります。この申立てによって裁判所から許可を受けることができれば、売却が可能になります。

◎許可を受けるための条件とは?

申立てしたかと言って、必ず許可を受けられるわけではありません。まずは、借地人が所有者となっている建物が存在していることが条件となります。すでに取り壊して「土地だけ」になっている場合には、そもそも申立てができません。

また、借地権を売却したことにより、地主に不利な状況が起こらないかもチェックされます。

例えば、借地権を譲り受けた人が地代をきちんと払えるのか…という新しい借地人の資金力も判断材料となります。滞納する恐れがある人が譲受人の場合、地主が不利な状況になるのは明らかなので許可が認められない可能性が高いでしょう。

このように、売却後の地主の状況も加味されるので、買い手が具体的に決まっている状態も申立て条件のひとつとなります。

そのほか、「借地権の契約期間がどのくらい残っているか」「借地人が売却したい事情」など、総合的に考慮されて許可を受けることとなるでしょう。許可が決定すれば、借地人は地主に承諾料として金銭の支払いをします。そして、借地権を売却できる…という流れになっています。

◎どのくらいの期間がかかるの?

許可を申し立てる先は裁判所ですが、審理にかかる期間は6か月程度が一般的。通常の訴訟と比較するとやや早く結果が出ると言えるでしょう。

◆まとめ

地主さんが承諾してくれないと借地権がなかなか手放せなくて困りますよね。地主さんとの承諾交渉では、借地人の方が「借地」に関する知識が少なくて、いろいろと苦労する場面が多いようです。承諾に変わる「賃借権譲渡許可」という申立て方法もありますが、いきなり行動を起こすとさらに地主さんとの関係が悪化することも…。

借地権売買に強い不動産会社に相談するなど、専門的な観点から、円満な解決へのアドバイスを受けることも視野にいれてもいいかもしれませんね。